「朔ちゃんって……。」
「なんだよっ!?」
「…もしかして、センス悪いんですか?」
真っすぐな瞳で問いかける梨子。
まるで、遊びに来ただけみたいな浮かれ気分の梨子に試着を勧められ、そのノリに負ける形で試着室に入った俺。
出てきて、一番最初に梨子はそう言った。
「…う〜ん、やっぱり派手な服がお好きなんですね。」
……センスが悪い、と言われて腹が立たないわけじゃない。
そりゃムカつくさ。
だけど、多分、梨子が言っている事は間違いではないだろう。
俺が試着している服は、
ジーンズ、『ムンクの叫び』のような表情の外国人女性の写真がアップでプリントされた白いTシャツ、その上にド派手なピンクのパーカー。
センス……特に、ファッションセンスが悪いと言われ続けて26年。
………確かに、これじゃ目立つな……。
「朔ちゃんは顔は良いのに、何だか残念ですねぇ。」
「……褒めてるようで、だいぶ失礼な事言ってるぞ。」
俺のツッコミを気にせず、梨子はおもむろに服を選ぶ。
そうして、何着か見繕うと、立ち尽くす俺に渡した。
「きっと、こちらの方が似合うと思います。」
「…………。」