バタンっと、助手席のドアが開き、熟睡していた奥田梨子が顔を出す。



俺は、現実に引き戻される。






奥田梨子は大きく伸びをした後で、赤いエプロンを外した。





「私にも1本いただけますでしょうか?」


「あ?あぁ、煙草か。」




1本、煙草を取り出して奥田梨子に渡す。



絶妙なタイミングで、火のついたライターを差し出した俺………短い間とはいえ、どうやら職業病らしい。




奥田梨子は煙を吐き出すと、ふふっと笑った。




「さすが、ホストです!」


「…つーか、自分の吸えよ。」


「ありません。
荷物は全て、『エース・マート』のロッカーに置いてきてしまいました。」





……あぁ。そういえば、そうか。