横のボケ店員に目を向けると、女は何事もなかったような顔で澄ましている。
……この女、マジで何なんだよ………。
俺はキャップとマスクを取って、後部座席に投げる。
「少し、落ちついたらいかがですか?すごい汗ですよ。」
ボケ店員は言った。
こんな状況で、冷静でいられるはずがない。
それに、いくら気が動転してたからって、何でこの女を連れてきちまったんだよ!
俺は、自分を呪いたくなった。
最悪だ………。
あのホステスっぽい女に目撃までされている。
青と黒のヒョウ柄のスーツ………こんな目立つ格好で、『エース・マート』の近所にホストクラブ『One』…………。
強盗が“藤嶋 朔”だとバレるのは、時間の問題だ。
クソっ!今にして思えば、どうかしてたんだ。
強盗なんか、やるんじゃなかった!!