起き上がったあたしは、手のひらのぬるっとした感触に眉をひそめる。
手のひらは、真っ赤。
湖のように広がった鮮明すぎる赤の中に、横たわる男が一人。
右手には拳銃。
あたしは、男―……藤嶋 朔を抱き起こして、その顔を見つめた。
まるで、眠っているかのように穏やかだ。
本当に、お人好しな男。
たかが、マゼンタの絵の具を撒き散らしただけ。
拳銃だって、空に向かって撃った。
そして、あたしは瞳を閉じて横になっていた。
ただ、それだけ。
こんなものに騙されるなんて。
……まぁ、いい。
色々と計画をして、慎重にやった事に結果がついてきたんだから。
まだ温もりが残る、彼の肌。
「………朔ちゃん…。」
ぽつりと呟いてみた。
その声は、擦れて消え入りそうなほど小さな声。
あたしは、力なく微笑む。