空は、ゆっくりと朝を迎えようとしている。
この町に来た日、駅から梨子と歩いた道。
家出をした幼い梨子が、一人歩いた道。
甦るのは、梨子と過ごした日々。
いくつも。
いくつも。
俺が歩いてきた場所に、流れ出る血が真っ赤なラインを作る。
足から駆け上がる激痛が全身の神経を麻痺させていた。
痛みが細胞を喰い尽くすなら、それでも構わない。
俺は倒れ込み、冷たい地面を見つめた。
腕を前に出して、足を引きずる。
ダサくて、格好悪い。
そんな事が、何だっていうんだ。
たとえ、這ってでも…………。
その、瞬間だった。
耳に突き刺さる発砲音。
俺は顔を上げた。
梨子、お前、まさか。