脳裏を駆け抜けた梨子の言葉。





俺の目から、涙が溢れた。


俺は…本当にバカで、バカすぎて………。





その言葉の意味も、寂しそうな微笑みの理由も、気づけなかった。








梨子は、俺を殺さなかった。




殺そうと思えば、いつだって殺せたのに。


今だって……梨子は心臓を狙わなかった。




それが…それが、全てだったのに……!








俺は、あがいた。



砂を掴み、何とか起き上がろうと痛む右足を引きずる。



だが、あがけばあがくほど、俺の身体は砂に沈んでいく。



ずるり、ずるりと引きずる右足は、もうただの荷物でしかない。





俺は砂を掻き分けて、広い道路まで這いあがる。



息は切れ、脂汗が額を流れた。