「…何か言いたいことは?」
梨子が、俺に問いかける。
俺は、今にも消えてしまいそうな声で呟いた。
「……俺を殺してくれ…。」
その瞬間、見上げていた梨子は唇を噛んで表情を歪めた。
「言われなくても、そうするわよっ!!」
「梨子、一つだけ聞かせてほしい。
……俺のことを“愛してる”と言った、あれも全部…嘘だったのか?」
梨子は、ほんの一瞬、肩を揺らした。
「……あなたって、本当にお人好し。」
「え?」
「愛なんて、あたしには要らない。」
梨子が言い終わるか、終わらないうち―……。
地を割るような発砲音が響き、その瞬間、俺の右足に衝撃と痛みが広がった。
梨子が引き金を引いたのだ。
弾は、右足の膝より下に命中した。
俺は声にならない呻き声をあげて、打ち寄せる波の中に倒れ込んだ。
足から吹きだす血は、白い砂浜を赤く染める。