「中学の時、姉は藤嶋 朔に恋をしていた。
でも、それを知った女子からイジメを受けるようになった。陰湿なイジメの本当の原因は、藤嶋 朔の事が好きな女子が抱いた嫉妬。
だけど、何も知らない本人は、姉を助けてはくれなかったっ!!」
脳裏に、あの日の記憶が甦る。
縋るように助けを求めて、俺を見つめた水沢詩織を、俺は拒絶したのだ。
力一杯、砂を握り締めた。
柔らかすぎるそれは、零れ落ちてしまう。
誰よりも最初に、水沢を傷つけ、苦しめたのは俺だ…。
もう、立ち上がる事さえできない。
そんな気力、もうどこにもない。
「…あたしは、ずっとあなたを見ていた。」
何も、言葉にすることができなかった。
梨子から水沢を、俺は奪ってしまったんだ。
たった12歳、大切な人の死を目の前にした梨子の痛み。
俺は、やっぱりただのクズだった。
どうしようもない、クズだった。