「高校を卒業してから1年間は引きこもり。
やっと部屋から出て、色々なアルバイトをしたけど、どれも続かない。
パチンコにハマってからは借金が増える一方で、さぁ大変。
この頃、半年付き合ったOLの彼女にも見捨てられる。
人生どうでもよくなってきて、ホストになってみたけどうまくいかない。
それで、コンビニ強盗。」
梨子は、ちらりと俺を見て、それからまた言葉を続ける。
「これだけ聞くと、どうしようもない人間みたいだけど、とても優しい人で。
不器用で要領が悪くて、考え方が極端で変なところで生真面目。
……それが、藤嶋 朔。」
「………どういう事なんだ?な、んで……。」
梨子は微笑む。
「言ったでしょう?
あたしは、ずっとあなたを見ていたの。」
寂しそうに、何かを諦めたみたいに微笑する梨子。
「好きよ、朔ちゃん。」
波の音が、永遠のように二人を包む。
梨子の悲しげな瞳に囚われて、俺は身動きすら出来なかった。