梨子は、俺の背中から降りると波打ち際で遊び始めた。
寄せては返す波を追いかけて、逃げだして。
俺は、ぼんやりとその様子を眺めていた。
こんなに愛した女は、梨子だけだ。
どれ程、大切で。
どれ程、特別か。
そんな事は、今さら考えなくても分かってる。
………梨子。
だから、俺は、
決して目を背けないよ。
君が何者でも、真実が辛く残酷なものだとしても。
「梨子。」
「はい?」
天真爛漫な笑顔を向けて、梨子は振り返る。
「……俺に、何か隠してる事はない?」
見つめあう俺たち。
梨子は首を傾げる。
「秘密は?」
「秘密、ですか?」
「あぁ。」
梨子は、空を仰いで考え込む。
何が真実でも、俺は全力で受けとめるから。