思いきり表情に嫌悪感を浮かべていると、梨子は楽しそうに笑った。
「でも、“サクラちゃん”でいれば、しばらくはバレないかもしれませんよ?」
「…そんなウマい事いくかねぇ〜。」
溜め息を吐き出し、俺は自分の煙草に火をつける。
……ったく、やってらんねぇよ。こんな事。
「なぁ?」
「はい?」
「あれって、やっぱヤクザ?」
俺は細長いオッサンを見て、何気なく尋ねた。
「あぁ!蓮見組の若頭さんですね。リンダママのダーリンさんです。」
「……ダ、ダーリンさん?」
「はい!愛に性別は関係ありませんから。
私も暴走族時代は、若頭さんのお世話になったものです。口は悪いですが、お優しい方ですよ。」
「へ、へぇ…。」
衝撃的なワードが多数。
……世の中には、いろんな奴がいるんだな………。
まぁ、そうだよな。
コンビニ強盗に入った店の店員と逃亡して、その店員に惚れちまった俺のような奴もいるわけだから。
世の中には、意外と転がってんだろうな。
衝撃的なコトが。
そう勝手に結論づけて、煙草の煙を吐き出した。