リンダママが出してくれたコーヒーを啜りながら、梨子はこれまでの事を全て話した。
俺が『エース・マート』に強盗に入ったあの時から、今日までの俺たちの逃亡劇。
だが、梨子は話がゴチャゴチャに混ざったり、飛んだりする。
実際、説明したのは殆ど俺だった。
リンダママは、黙って俺たちの話を聞いてくれていた。
さっきまでのハシャぎっぷりが嘘のように、冷静な目で俺たちを見据えて。
俺が全てを話し終えたところで、梨子が口を開く。
「リンダママ、お願いします!絶対に迷惑をかけないと誓いますから、私たちをここに置いてください!お願いします!」
梨子は、頭を下げる。
俺も頭を下げた。
このオッサン……リンダママと今日が初対面の俺は、相手を完全に信頼したわけじゃなかった。
けれど、梨子が信じている人間だ。
………だから、俺も信じてみたいと思ったのだ。
リンダママは、一つ溜め息を零してから口を開いた。
「梨子の頼みじゃねぇ〜。断れないわよネェ〜。」
「リンダママ!」
「二階の部屋が一つ空いてるからスキにしなさい。」
梨子と俺は、顔を見合わせて笑った。