『エース・マート』の表通りに出ても、人の姿はない。
車も、一台も通らない。
俺は俯いて歩きながら、横目でちらりと『One』の従業員専用駐車場を見た。
誰もいない。
停まっている車の台数も、さっきと変わっていないように思えた。
大丈夫だ、
そう言い聞かせながらも、今頃になって心臓がドクドクと五月蝿い。
ここまで来て……ビビって逃げるなんて冗談じゃねぇ!
それじゃ、今までの俺と一緒じゃねぇか!
ゆっくりと歩きながら、窓ガラス越しに『エース・マート』の店内を見る。
客はいないようだ……。
店員も、ここからは見えない。
………大丈夫だ。
金を奪って、逃げるだけ。
俺は、もう小心者じゃねぇ。
昔みたいに、ダサくもねぇ。
きっと、
強盗なんかやってのけたら、俺は生まれ変わる。
勢いから始まった事だ。
勢いでやっちまえばいい。
………行くぞ……。
俺は、その勢いに任せて、『エース・マート』のドアを開けた。