「7歳の時に両親が離婚して、私は母と共にこの町を出ました。」


「えっ?」



思わず出てしまった間の抜けた声。



梨子は気にする事なく、話を続ける。


海から吹く風に、梨子の髪が揺れていた。




「母は仕事が忙しくて、私はいつも一人ぼっちでした。新しい町にも、なかなか馴染めなくて…。」




てっきり、梨子は温室のような場所で育ったのだろう、と俺は勝手に思い込んでいた。


何不自由なく、愛されて育ったのだと。





「だから、小さい頃はよく家出して、白岩に戻ってきてしまいました。
この町が大好きでしたし、こちらの方が友達もいましたから。……その度に、母を困らせていました。」




梨子は……昔を思い出しているんだろう。



懐かしそうに微笑んだ。