「……まえに言ってただろ?好きな奴がいるって。
……そいつの事は、もういいのか?」
そう口にしてから、バカげた質問のように思えた。
けれど、不安だったのだ。
本当のところ、梨子はどう思っているのか。
俺の問いを聞いて、梨子は伏し目がちに笑った。
その笑顔は、どういう訳か、酷く寂しそうに見えた。
しかし、それもほんの一瞬で。
梨子は何事もなかったような、いつもの笑顔で言った。
「ヤキモチですかぁ?」
「はっ!?」
「心配しないでください☆私は、朔ちゃんが好きですヨ!」
「う…うるせぇーよ!!」
「もぉ!照れ屋さんなんだから!
あっ!!朔ちゃん、見てください!海ですよ!!」
梨子は、そう言って窓を開けた。