浮かれ気分の梨子の隣で、俺もどこか浮かれていたのかもしれない。
まるで、地に足がついていないような。
梨子が笑う、
ただ、それだけでよかった。
様々なラインを越えた俺たち。
日常のラインや、関係のライン。
そのどれも、俺は後悔していない。
今となっては。
あの日、勢いに任せて強盗に入らなければ、こんなに満ち足りた幸福に出会う事もなかったのだから。
どんな結末が待っていようとも、二人一緒なら恐れるものなど何もない。
だが、掴んだ幸せに、一つ小さな影が落ちていた。
俺は、梨子と出会って昔の恋を思い出にする事ができたが………梨子はどうなんだろう……。
そういう思いを振り払いたくて、俺は気になっていた事を尋ねた。
「梨子。」
「はい!」
「……聞きたいことがある。」
「何でしょう?」
梨子は首を傾げる。