なぜなら、俺が生まれてから中学卒業までを過ごした町だからだ。
こんな偶然って、あるんだろうか?
俺が15歳までを、梨子が7歳までを、過ごした町が同じだなんて。
自分でも、よく分からない違和感。
俺と梨子は、どこかで繋がっている気がしてならないんだ。
その点と点が線になった時、何が見えてくるんだろう………。
「朔ちゃん!電車が来ましたよ!」
明るい梨子の声。
色落ちして錆付いてしまったような色の、オレンジ色の電車。
11年前の、記憶の底に埋もれていた電車と同じだった。
白岩までは、この電車に揺られて1時間弱だ。
3両編成の電車の中には、誰一人として乗客はいなかった。
さすがド田舎の電車……。
それでも、俺がガキの頃はまだ賑わっていた気がする。
「うわぁ!貸し切りですねぇ!」
梨子は楽しそうに車内を見回す。
誰に遠慮する事もなく、俺たちは深緑色のシートに腰をおろした。