『届かないことや無理なことはたくさんあるし、経験もしてきた。空を見上げる余裕、今日の天気さえも知る余裕がなくなるぐらいにね』
その横顔を見ると、
確かにこの人はたくさん闘ってきたに違いないと思った。
少し疲れた顔をしている。
『…それでもね、私は願ってしまうし、死に物狂いで頑張りたくなってしまうんだよ』
担当医さんは窓にそっと手を触れさせた。
『あの白に届くまで』
――果てしなく続く空のどこかに、
日向先輩がいるなら
それでいい。
その時、そう思ったから。
だからあの書類のことは胸に秘めて、生きてきた。