ポケットの中のメモ用紙をくしゃっと握り締めた。
「柚先輩」
「うん…?」
「…やっぱり、俺たちは待っていましょう」
俺が言い出しておいて。
柚先輩を期待させておいて。
本当に申し訳なくて、また涙が出た。
それでも言葉を続けた。
「…日向先輩は、いつか絶対に帰ってきます。
だから待っていましょう。
いつか先輩が俺たちのところに帰ってきてくれる、その時まで」
柚先輩は何も言わなかった。
電話越しの沈黙に、やっぱり怒らせてしまったんだと不安になる。
しばらくすると、「…そうだね」と小さな声がした。
「そうだね。もう少し待っていよう。そう思ってるよ。…いつだって」
「…柚先輩」
「ありがとう。大地くん」
突然お礼を言われて戸惑った。
柚先輩の声は、微かにかすれていた。
それでも必死に言葉を続けていた。
「そう言うってことは、日向が…いたんでしょう?
ありがとう。見つけてくれて。
日向がいるならずっと、ずっと待ってられる…」
かすれた声は、涙声だったんだ。
そう気付いた。