めちゃくちゃに溢れた涙が、次々に頬を伝った。

カナさんは慌ててハンカチを渡してくれた。


「だ、大丈夫!?そんな泣くような話しちゃった?わたし…」


「いえ……



…最後にひとつだけ、聞いてもいいですか…?」



ハンカチを握り締めて俯いたまま、俺は絞り出すような低い声で聞いた。

カナさんは少しうろたえながらも答えてくれる。



「え…ええ。なんでも」


「その人…


―――…スポーツバカですか?」




彼女の大きな瞳が、一瞬驚いたような戸惑ったような…そんな表情を浮かべた。

とてもびっくりしたに違いなかった。



「…そうね。根っからのスポーツバカ。でも、走る姿がとてもきれいなの」

「そうですか…」

「会ってみる?ちょうど明日には大学に帰ってくると思うし」


俺は涙を拭って微笑むと、静かに首を振った。



「…いえ。今日の夕方には帰らなきゃいけないんです」