「…っ」
奴を、振り向いてはいけなかった。
でも振り向いてしまった。
「…っ、ありがとな…」
…ヤバイ。
泣きそうだ。
ここは俺の泣く場面ではない。
そう分かっていても。
―――日向が泣いていると、俺は何故かその倍以上に泣きたくなる。
「…おい」
「…」
「らしくもない。…笑えよ。いつもの毒舌で、自信たっぷりで、憎たらしいお前でいろよ」
声を張り上げていないと、目から熱い何かが零れ落ちそうだったから。
…俺はそう明るく言って、日向のブランコを軽く蹴った。
俺達が一緒に過ごした時間は
あまりに短いものだった。
俺が見ている日向は
日向が見ている俺は
あくまでお互いの長い人生の…ほんの1ページにしか過ぎない。
もっと出会ってく。
もっと成長してく。
これから、長い未来がある。