不思議な空間だった。
時間が流れているような、流れていないような…
見えているはずのブランコも滑り台も、輪郭が曖昧になる。
…だけどこれが夢でないことだけは、何故かはっきりと確信していた。
「拓巳」
「ん?」
「止めなくていいのか?」
その言葉に横を向くと、
その瞳が少し揺れていることに気付いた。
珍しい。
いつも毒舌で、自信をしっかり持った表情してんのに。
…多分俺の考えてることが分からなくて、戸惑ってるんだろう。
「…なんで?」
「…は?」
「なんで、止めんの?」
だって俺は、と呟いて。
ふと、座っていたブランコを立ち漕ぎし始めた。
…たまには俺からも、焦らしてやりたい。
いつもなかなか本音を見せないこいつに、怪訝な表情をさせてやりたい。