ウィンド・レター




目を丸くして白い紙ヒコーキを受け取った柚は、俺を見上げた。




「…中に、何が書いてあったの?」


「まだ見てない」


「え?」


「この八年間、ずっと置いておいたんだ。…でも多分、日向の行き先が…」




俺の話を聞いた柚は、何故か静かに笑っていた。


落ち着いた、でも優しい笑みだった。





…まるで日向の全てを、分かっているみたいに。





「拓巳はまだまだ分かってないね」


「は…?」


「あの人がそんなにすんなりと、行き先を教えてくれるわけないじゃない」




柚はそう言いながら、紙ヒコーキをゆっくり…ゆっくりと広げていく。



…破らないように、慎重に。








「……ほら」