ウィンド・レター





喫茶店を出た後。



名前を呼ばれた瞬間、ふと柚の声は日向に似ていると思った。


…柔らかくて。
耳にすっかり馴染んで。






「…どうしたの?」


「へ?」


「なんかぼんやりしてるから。…仕事疲れ?大丈夫?」




俺を気遣ってくれる柚の、あどけなさがまだ残る顔をじっと見つめた。




「…」


「…拓巳?」



「……やっぱりこれは、柚に託すわ」


「え…?」






不思議だ。



柚の隣には、日向を


日向の隣には、柚を




―――連れて行きたくなるんだ。


こいつらは不思議な力を持ってる。



…それはあの頃から、ずっと。







「日向からの…?」