あっさり手を振った俺に、日向は小さく笑った。
「お前ぐらいだぞ。…旅立つって分かってる奴の、行き先を知りたがらないのは」
「だってお前が教えたがらないのは、分かってるから」
「…ほれ」
日向が差し出したのは、白い紙ヒコーキだった。
メモを畳んで作ったらしく、中にうっすらと文字が見える。
「……え」
「開けるも開けないも自由だ。…お前が開けてもいいし、あいつに渡してもいい。開けなくて燃やして食ってもいい。好きにしろ」
「食うか!」
「じゃあな」
日向は、柔らかく笑った。
…初めて出会った時を思い出させる。
優しい懐かしさが、胸をよぎった。
「ああ。…じゃあな」
じゃあな。
―――藤島の風。