「大丈夫だよ」
なにがかわかんないけど。
きっと大丈夫だ。
「私がちゃんと繋いでいたら、寒い思いしなくて良かったのに」
「大丈夫だ」
徐々に無表情だった吉山が唇を噛みながら言葉を発する。
「もうこんなに寒いんだよ?並木道は土の上も冷たかったよ……また凍えてるのかな」
「大丈夫」
子供をなだめるように、頭を何度も何度も撫でた。
泣けるのなら、泣いてしまうなら思う存分泣けばいい。我慢してるから途切れないんだ。
思い切り泣いて、笑えるように、ちゃんと泣ければいいなと思った。
俺の言葉に吉山は「う……うー」と声を殺しながら泣き続け、俺の胸にもたれ掛かるように落ちる。
吉山の頭から枯れ葉のニオイがする。秋のニオイだ。
「土に埋まったことなんか、俺にはないからわかんないけど、だけど大丈夫だよ」
「寒くない?冷たくない?」
「わかんねーけど……寒いけど秋だって綺麗じゃねえか。あんな並木道で色を感じながら過ごせたんだ。
きっと綺麗だっただろうな。
辛かったかもしれないけど、淋しかったかもしれないけど、きっと色とりどりの枯葉が少しは暖かくしてくれたかもしれない。
寒い前の秋で良かったかもしれない。
それでも寒いと思うなら抱きしめてやれ、そして寒さが終わったときに、春に、墓にいっぱいの花を巻いてやれ」
色とりどりに満たしてやれ。
寒い季節が終わったら暖かい季節が来る。今はまだこれから寒さを増す冷たい季節だけど、だけどそれでも春は来るから。逆に暑くてたまんない夏だってあるんだから。
そしたらまた冬が恋しくなるように。
「春の喜びを一緒に感じて感じさせてやれ」
巡るからこそ愛おしい。巡るからきっと嬉しい。ずっと寒い訳じゃない。暖かいコーヒーを飲んで体が温まるように。
些細な事できっと温かくなるから。
だから、なにより。
「お前がちゃんと暖まっていないとずっときっと寒いままだ」
せめてお前の記憶の中だけでも暖めてやれ。