私は仕事帰りに毎日、家の近くのコンビニで、板チョコ五枚を必ず買うことにしている。
 その習慣は、おおよそ半年前に始まった。



「美治……なに、してんの?」

 準備が丁度できたところで、背後から和希の声が聞こえてきて顔を上げると、眉をひそめ訝しげに私を見つめる彼の姿があった。

「お風呂の準備」
「……なに言ってんの?」
「ほら、早く服脱いで」

 彼の質問には一切答えずに、自分の告げたい言葉だけを口にし、腰を上げて彼の服に手をかける。

「……ちょ、待てって! なんで脱ぐの?」
「お風呂入るからに決まってるでしょ?」
「いや、違うだろ!」

 私の手を掴む彼の手に動じることなく、強引に彼のシャツを捲り上げて、ゴムの緩くなったジャージを引き下ろした。いとも簡単に馬鹿げた格好になって、羞恥と困惑の表情に染まっていく彼はとてもかわいい。

 とはいえ、私はお風呂に入って欲しいだけ。彼の体に触れることもなければ、気持ちよくさせてあげようなんて気持ちだって微塵もない。

 ただ、お風呂に浸かったあとの彼ならば、今までにないほど愛せるかもしれない。

 だからこそ、さっさと風呂に入れ。

「ほら」

 手を引いて、彼を浴槽の前に連れて行く。
 一歩中に入っただけなのに、そこは甘ったるい匂いが充満していた。

「……冗談、だろ?」
「冗談でこんなことすると思う?」

 引きつった笑いで問いかける彼に、真面目な顔をして私が答えると、さすがに彼も真剣な顔つきに変わった。