結婚する前は、気兼ねなく飲みに行っていた。朝まで飲み続けることもあったし、その間タバコも本数なんかわからないくらいに吸っていた。
――働くのは、楽しい。
楽しいことばかりじゃないけれど、それすらも楽しみにいずれ変わる。
いつの間にか28歳になった。
同じように彼氏も28歳になった。
このまま30になっても、40になっても、私たちは変わらないのかも知れない。
私は働いて。達也が家のことをしてくれて。
「やっぱ、結婚って考えたらそれなりにお金もいるっしょ」
「現実的ー」
「だって養ってもらうんだよ? 無職とかないわー」
電車で目の前の女の子たちが話しているのに耳を傾ける。
私よりも若い女の子二人。
可愛くて、彼氏なんてすぐにできそうな女の子たち。
結婚したら、少なからず養ってもらうのだと思っていた。多分両親がそういった形だからだろう。母は常に家にいたし、父はいつだって仕事だった。
どんなに遅く帰ってきても、母は父を出迎えた。
そんな両親も、あと数年で還暦を迎える。
私はどうなるんだろう。達也はどうするつもりなんだろう。
このまま――ある意味終わりなく働き続ける? いつまでも必死に。隆平を小学校に行かせて、いずれ高校も大学も。そのときいくらのお金が必要になるだろう。
その全てを、私が背負っている。
――重い
そして
――漠然とした、不安。
達也も隆平も、大事で大好きなのに……心のどこかで思ってしまう。
――どうして私一人が支えなければならないのか、と。
しわくちゃのおばさんになっても、必死に深夜まで働く自分なんて、想像していなかった。