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「ほら」
コン、と軽く机にマグカップに入れたホットミルクを差し出した。
吉山は俺が貸した毛布にくるまってマグカップを両手で包み込むように手にとって一口飲む。喉がこくりと音を出すように動き、俺はコーヒーを飲みながらソレを見た。
「あんまり美味しくないね」
お前が欲しいって言ったんだろうが。何がいい?って聞いたら自らホットミルクを注文してきた癖に……なんて我が儘なんだ。
そのまま吉山は文句を言ったもののホットミルクを少しずつ口に含んで飲んでゆく。
お腹空いてたんじゃなかったっけ?そう声を掛けようと思ったけれど俺は何故か何も言えなかった。
声を掛けてはいけないような、そんな雰囲気だったから……。
「ねえ」
ゆっくりと音をならさずに吉山はマグカップを机に置いて俺に声を掛けた。
「ん?」
「寒いね」
まだ寒いのか。俺にどうしろって言うんだ。暖房つけるにはまだ早いだろ。
「こんな中、ずっと外にいたら人間だって死んじゃうよね」
「どうかな。まだ真冬じゃないし……風邪はひくだろうけど」
そもそもそんな状況になり得るだろうか。
そのまままた吉山は黙りこくってしまい、俺たちの間には静かな秋の空気が流れた。何かが枯れていくようなニオイがする。
そんなものは気のせいなのだけれど。
「浜崎君は、泣いたことある?」
また急に良くわかんない話を……そう思いながら記憶をたどる。