「私、彬(あきら)のこと好きなんだけど」

お酒の席で突然言われた言葉に、ばふっと漫画のように焼酎を吹き出した。
焼酎を吹き出すと、喉に来ることを始めて知った。ヒリヒリする。

いや、そんなことどうでもいい。


「――え?」


目の前の明里(あかり)は、そんな私にクスリとも笑わないで見つめてくるだけ。
笑い飛ばそうと思った自分に若干の罪悪感を抱いた。

真っ直ぐ見つめてくるその瞳は、微かに潤んでいて、そらは次第に大きな雫になった。マスカラが落ちてしまうんじゃないかと思う程に、大粒の涙を落としていく。


「……明里……」


その言葉以外になんと言えば良かったのか。


正直なところ、告白されることはそこそこあった。
これが何の自慢にならないことは分かっているのだけれど……。だけどそれは自分にとって「たまにある」ことだったから、今回もいつもと同じように笑い飛ばすなり、すぐさま「ごめん」と口にすればよかった。

相手が、明里でなければ。


「……何も言ってくれないんだね」


明里は真っ直ぐに見つめてきた瞳を軽く伏せて、自嘲気味に笑った。
それが余計に胸を痛ませる。

ごめんと想う気持ちばかりなのに、このタイミングでごめんと言う言葉を吐きだしてしまうと、――明里との関係が終わってしまうようで口には出来なかった。


口を閉ざすことが、何よりも明里を傷つけることだって、分かっているのに。

掛ける言葉は何一つとして頭に浮かんできてはくれない。

素直な言葉を言って良いのだとすれば。
ただこれだけ。

――明里は、親友。

何よりも残酷な言葉だと言うことを、知っているから言えない。
ごめんという言葉をかけて終わらせる方が明里にとっても良いだろうと思うのに。


その言葉で明里との関係が終わってしまうのが、嫌なんだ。それだけ、明里が、大切なんだ。
それは自分の我が儘。