「何で構うの?」


ねえなんで?何の為に私を抱くの。何の為に、そんな真剣な顔を私に見せるの?

私の言葉に一瞬、ぐっと何かを堪えるようなユウスケの顔になった。
答えられないんでしょう。


「理由がないならもう構わないで。

どうせ酔った勢いで始まった関係なんだからほっといて、私に構わないで……その場のノリで始まっただけじゃない、私たちなんて」


それだけの関係。体だけ。体から始まって、体だけがつながった関係。
私と一緒であんたも私を利用しただけなんでしょう?それだけでしょう?



「好きだからだよ!」



何も言わずに沈黙だけが流れる空間を壊すユウスケの声。
意味を理解するのにまた数秒の沈黙。


「は?」

「俺は、お前が好きなんだよ……確かに始めは酔った勢いだったけど……」

「嘘つき」


そんなの信じない。だって酔った勢いで始まった関係。あんたの気まぐれで、たまに体を合わせる関係。

そんな関係信じない。


「お前が……前の男を引きずってて……利用してるのはお前だろ?」

「何それ」


逆切れ?
そんなのそんな昔の事なんてもう覚えてない。
前の男の事なんて、もう好きじゃない。
だけどそうでもしなきゃ我慢できなかっただけ。そんなフリをしてないと保てなかっただけ。

体から始まった。
酔っていただけ。
それだけだったはずなのに夜に気まぐれでかかってくる電話。

気まぐれで家にやって来て抱きしめてくれる。
たわいのない話をして隣で眠る。

あんたの何かを知っている訳じゃない。
だけど惹かれるこの気持ち。朝起きていないユウスケの姿に淋しいと思うこの気持ち。

これを恋と呼ぶにはあまりにも……。
あまりにも曖昧な関係
あまりにも不安定な関係

だからこんな関係でこんな気持ち信じたくなかった。


「引きずってない……」

「メンソールの煙草吸っといてよくいうよ」

「誤摩化して……いただけだもん……」


あんたのハイライトの苦い匂いをすうっと通るメンソールで、元カレを思い出して必死で必死で我慢をしていただけ。