財布の中身は500円程度。ちなみに残りは家にある5000円だけだ。それであと10日過ごすんだけどな。


「無理」

「えー……」

「大体何でお金持ってないんだよ。手ぶらだしなにしてんのお前」


改めて吉山をみると、家にいたかのような薄着に、手にはなにもない。本当に意味が分からない。正直関わらなければ良かったとさえ思う。

本気でおかしいぞ、この女。

俺の問いに、吉山は少し黙ってうつむいた。


「くしゅ!」


……あーもう!
さすがに俺も肌寒く感じてきて頭をぼりぼりと掻いた。


「俺ん家、すぐそこだけど……」


さすがに“来る?”とは自分から聞けなかった。やっぱり……そんなに親しくない関係で一人暮らしの男の家に……なんて警戒されそうで。

そんなつもりは毛頭無いけれど。そんな風に思われるのは心外だ。


「……ココアある?」

「ねーよ」


俺の返事に少し不満そうにしつつも、吉山は少し考えて「行く」そう返事をした。