彼の言葉に、私がどれほど嬉しく感じたのか、きっと彼には分からないでしょうね。
どんなにお酒に溺れたって私は記憶なんかなくさないし、なくしたところで事実は変わらない。
どんなにお酒が残っていたって私は朦朧としながらでも仕事に向かうし、与えられた仕事はするだろう。
大丈夫?と聞かれたら大丈夫だと答えるだろう。
私はどうやっても私で、お酒に溺れてお酒に苦しんでいたってきっと明日にはしゃきっと起きて青空の下自転車に乗って買い物に行くだろう。
一週間分のご飯を、今度は1人分のご飯を買わなくちゃ。
天気が良かったら洗濯物だってしたいし、朝早く目が覚めたら買い物にでも映画にでも出かけたくなるだろう。
しっかりしている訳じゃないけれど。
だけどそんな自分は嫌いじゃないし、そんな自分が好きだから。
――でも今日は、青空はちょっときついから、部屋で明かりを消してカーテンを閉めて布団にくるまって泣きながらお酒に苦しめられるのも悪くないかもしれない。
たまにならそんなぐうたらも許される。
そんな無駄に過ごす一日も自分でアイしてあげられる。
明日から笑えるように。
そしたらもう今じゃお酒なんか飲みたくない気分だって忘れ去る。
携帯電話を取りだして、今日約束をしていた友達に謝罪のメールを送って、まだ気分が悪いけれど自然と窓からの空を眺めて微笑んだ。
まだゆらゆらと、まるでお酒の中を泳ぎ回って真っ直ぐと前を見れないけれど、だけどきっと。
今のままの気分の悪い憂鬱な今日も、ちょっと楽しくなれそうなそんな気持ち。
お酒を飲めば忘れられるほど毎日はいいものではないし。
忘れられないことの方が多いし、ぐでんぐでんにぶっ倒れたって何も変わらない。吐きだして吐きだして泣いたところで笑えるわけじゃない。
――だけど。
忘れられないからこそ、飲んで溺れて一番大事な物まで見失ってみたって良いでしょう。
忘れたからこそまた思い出せるものもあるでしょう。
今日はもう煙草を吸いたいとも思えないけど、きっと明日にはベランダで眠気覚ましにいつも通りに一本咥えて空を眺めるはず。
――今日くらいは、自分を甘やかせてあげよう。
大丈夫。
また自分の事を好きになれる。
明日にはきっと。今日よりももっと。
End