相変わらずちんたらちんたら仕事をする林。ああ、ほんっとイライラする。
 これで私の好みじゃなかったら、林なんで今すぐ粗大ごみで捨ててやるのに。

「っていうか、あんた本当にこの仕事は特に遅いよね」
「あんまり、こいつ好きじゃないんだよね。気が合わないっていうか……」
「好き嫌いはいいから。本当にあんたは好き嫌いが激しいよね。一見社交的な八方美人のくせに」
「人見知りなんだよ」
「ほー。私よりもかわいい女の子に対してはバリバリ仕事するくせに?」
「やだなあ。きみの前でだけぼくはぼくでいられるんだよ」

 いけしゃあしゃあと言いやがって。

「嫉妬するきみもかわいいしね」
「嫉妬はしてない。仕事して欲しいだけ」
「きみがぼくを乱暴にこき使い過ぎなんだよ。アレもこれもぼくに持たせてさあ」
「アレもこれもなかったら仕事ができないんだから仕方ないでしょ。っていうか、あんたの仕事は主にそれを受け止めることでしょうが」
「……そうだけどー」
「林?」
「んー。わか、ってる」

 あ、やばい。

 話をしていると、林の口調がどんどん遅くなってきた。
 やばい、これは、やばい。まて。待て待て待て待て。


「ごめん、ぼくもう無理」
「やだ……! 待って! やめて!」


 ちょっと待ってってば!

 立ち上がった拍子に、椅子が大きな音を出して倒れた。
 目の前が、真っ暗になる。真っ黒のそこには、私のアホ面が写り込んでいた。


「ウソ、でしょ」
「……どーした? また落ちた?」

 呆然と立ち尽くしていると、隣の営業さんが覗き込んできて「あー落ちたね」と彼を見て言う。

 ちょっと、待て。
 私、最後に保存したのいつだった? さっき一瞬不穏な空気を感じたあと、保存したっけ? え? ちょっと待って。いつから? ヘタすると最初から?

 ウソでしょ!?


「仕事しろや、林ー!」


 バシバシと彼の顔を叩く。けれどもちろんなんの反応もない。うんともスンとも言わない。
 私が倒れたい。倒れたい。ベッドにダイブしたい。その前にこいつを破壊したい。


「あはは、Macに名前つけてんの、いつ聞いても面白いよね。林檎だから林? あはは!」
「笑い事じゃないんですけどー! 今日中の仕事なんですけどー! また最初からとか、信じられない、信じられない」
「古いMacに新しいアプリ入れまくってたらそうなるでしょ」

 そりゃそうだけど。それがないと仕事にならないじゃない。っていうか、そのためにメモリも増設して、OSもアップデートしたのに。

「新しいOSとOfficeの相性、悪いよねえ、ホント。俺OSアプデしなくてよかったー」
「林のバカー! 慣れないExcelで一生懸命表作ったのにー!」

 イラレでデザインする以上の時間を! Excelに費やしたというのに……! 林のばか! バカバカバカ!

 なんだよお前が最先端がいいって言ったんだろ。だからふてくされて前まではすぐにエラー起こしたんだろ? なんでだ。アプデしたらなんでこんなことに! 見かけ以外いいところねーじゃねえか! Dockのアイコンが好みになったこと以外に私にいいことなんもないんですが!