「でも、カッコ悪いでしょ? 両思いってわかってるのに好きだとか言うの。いやじゃん、そんなの。だから、言いたくなかった。なのにちな食いついてくるんだもん。いつからそんなにしつこくなったの? もう面倒くさいんだから」
今、セイちゃんはどんな顔をしているのだろう。
ねえ、セイちゃん。わたしは臆病者で、すぐ逃げたり避けたりしちゃうけど。でも、ずっとセイちゃんの親友だと思ってた。一五歳の時も、二十歳の、今も。
だから、わかるんだよ、セイちゃん。
わざと、わたしを怒らせようとして、無理に明るく、馬鹿にしたように笑いながら喋っていることを。
だってわたしは、セイちゃんのことが、大好きなんだから。だから。
「セイちゃん、わたし、セイちゃんとずっと、友だちでいたいんだよ……」
思わず吐き出すと、セイちゃんは振り返り、ぽかんとして口を開けた。そして、ぷっと吹き出してケラケラと笑い出す。
「なに言っての、ちな。あたしの話聞いてたの? こんなあたしと友だちなんて――」
「そんなことない、セイちゃんは、そんなんじゃない」
「なんでよ。ずるいじゃない。ちなは両思いだから、別に今じゃなくてもいいじゃん、あたしに告白する機会くらい譲ってよ、ってずっと思ってた」
そんなの、おかしいことじゃない。
思ってたって、セイちゃんはずっと、黙ってくれていたじゃない。笑っていてくれたじゃない。
「なんで、泣くのよ、ちな」
そう言いながらセイちゃんの顔も涙で濡れていた。
わたしと同じように、思いが胸に詰まって、かわりに涙が溢れるんだ。
「勝手に我慢したのに、勝手に嫉妬して、ちなに意地悪な質問したんだよ! あのとき、あたしを優先してくればいいと思った。今坂の名前なんか隠して嘘ついてくれたらいいと思った。そしたら、ちなのことウソツキ、って思えるんだもん」
わたしも同じだった。
五年前に隠したって、思いはすぐになくならない。本音を言って欲しいと思うのに、聞きたくなくて耳をふさぎたくもなる。
抑制すればするほど反動が大きくなって、どうしようもなくなって、息もできなくなるほど、苦しいんだ。