「っ…泣いてないよ…」
「いや、泣いてんじゃん」
「だって…
だって、だって…!」
これ以上何を言えるだろう。
これが夢だなんて言えない。
言った瞬間きっと、この愛しく儚い夢は覚めてしまう。
「ひな…たっ…」
「何?」
日向は優しく微笑みながら、あたしの髪をあやすように撫でてくれた。
「っ…忘れないで…」
「…え?」
「日向の大切なものを、忘れないで…」
…でもその言葉は
夢だから言えたのかな。
…本当はね。
"君を忘れない"
"だから君も私を忘れないで"
そういう花言葉を持つ、勿忘草を日向に渡すつもりだった。
…だけど。
「だけど…」
そんなのは、あたしの身勝手な我が儘だ。