「…っ」
なんだ…
…何をまた…淡い期待を抱いてしまっていたんだろう…
そう息を吐いて…でも、あたしは日向の傍へと歩み寄った。
「柚…」
そう呟いて、日向から受け取った葉の匂いを静かに確かめる。
心が…落ち着くような気がした。
「いい匂い…」
「だろ?」
「…あたしの名前も、柚って言うんだよ」
自然に、微笑んだ。
…どうしてだか、無理なくそう言うことが出来た。
「ゆず…か」
日向は目を閉じて、反芻するようにその名前を呼んだ。
「…いい名前だな」
「っ…ありが…とう…」
それだけで、胸が一杯だった。
この感情の名前が見つからない。
…それでも言うならば、愛しい。
―――…君が生きていることが、有り得ないくらいに愛しい。