日向はベッドから上半身だけを起こして、静かに窓の外を眺めていた。
少し茶色っぽい、柔らかな髪。
痩せているという訳ではないのに華奢で、綺麗な体のライン。
…何も変わらない。
ただ足にはめられたギブスや色々な装具が、痛々しいだけで…
「ひな…た?」
再び名前を呼ぶと、日向は静かにこっちを振り向いて。
…小さく、微笑んだ。
「…柚」
「…っ、え…っ!?」
一瞬…心臓が止まったような…そんな気がした。
…呼吸が上手く出来なくて、体が動かなくて。
「…っ!?」
「柚。…すげーいい匂い」
日向は長い腕を窓の外へと伸ばして、大きく伸びた柚の木から葉っぱを一つ取った。
「特等席だろ、ここ。
…匂い、嗅いでみ?」