「皆さん…来て、くれたんですね」



2日ぶりに会ったおばさんは、信じられないくらいに変わり果ててしまっていた。



痩せてしまっていて、目の下には少し隈が出来ていて…おばさんが一時も日向の傍を離れていない証拠だった。




「それで、日向は…」


「…記憶喪失。完全に診断されたわ」



病院の一階にある、大きなソファーに腰を下ろして。



おばさんは目を伏せると、呟くように言った。




「…服の着方。箸の持ち方。そういう習慣的なことは全て記憶に残ったままなの。



先生の診断によると、日向にとって印象の強かった記憶…例えば家族や友達、陸上などの部分的な記憶が損なわれているそうなの」



だから、私の名前も覚えていなかった。



…おばさんが小さく小さく付け足したその言葉が、酷く悲しくて切なかった。



「それら全てを覚悟の上で…会ってやってちょうだいね」