壊れたくなかった。



壊れちゃいけなかった。





…もう二度と会えなくなってしまうような、そんな気がして。





「柚ちゃん、向き合わなきゃダメなんだよ」


「でも…!」


「日向がどれだけ陸上を好きだったのか、一番知っていたのは柚ちゃんだ」


「……っ」




優しくて、でもまっすぐな隆史先輩の言葉に何も返せなかった。




「日向にとって"記憶"と"足"がどれ程大切かも…一番知っていたのは柚ちゃんだ」


「…」


「だから君は、日向を見てあげなくちゃいけない」




日向が今何を失い…



何を苦しみ…



何を感じているのか、を。




「ーっ…」


「行こう」



再び雄大先輩に、手を引かれて。





「…はい…」



…あたしは静かに、頷いた。