「お前まで…壊れんなよ」
「っ…」
「先輩がなんで今日をオフにしたのか…良く考えろ」
「…だって、忘れちゃいそうで怖いんだもん…!」
あたしは拓巳の腕を掴んで…唇を噛み締めた。
「あたし怖い…すっごく、凄く怖いよ…!」
「ゆ…」
人の記憶は儚い。
明日…消えるかもしれない。
何もかも、消えるかもしれない。
「あたしが全てを覚えてなかったら、日向は…っ…日向は…!」
「柚!」
拓巳は不意にあたしの肩を強く掴んで、揺さ振った。
「っ、たく…」
「お前、肝心なこと忘れてないか?」
「っえ…」
拓巳の鋭く真剣な瞳が…あたしを、まっすぐと捕らえる。
「たく…み…」
「…日向は、生きてる」
"生きてる"。
…そのまっすぐな言葉が、何とも言えない熱を持ってあたしの心に入り込んできた。