「柚」


「…」


「ゆーず」


「…」


「柚さーん」



穴があったら入りたい。



初めての嘘さえも日向に見透かされていて。



愛ちゃんの気持ちをむげにするようなことして。



…本当、最悪。




「うー…



…消えたい…」



膝に顔を埋めて、思わずそう呟くと。



「柚が消えたら俺が困る」



そう笑って、日向があたしをツンツンとつついた。



「…本当?」


「お前がいなかったら雑用が全て俺に回される」


「な、何ようっ!」



あんまりの台詞に思わず顔を上げると。



…日向の、ちょっぴり意地悪でちょっぴり優しい表情が目に入った。



「顔上げた。


…俺の勝ち」


「ーっ、バカ日向っ…!」



…でも。



幼なじみで良かった。



誰よりも日向を知っていて、誰よりも日向に知られているから。



…あたしにはそれが、たまらなく嬉しいんだ。