「…俺に渡すもんがあるだろ?」


「…!」


「さっきすれ違いざまに八木に"あの手紙の返事…待ってるから"とか言われて。


意味が分からなかったけど、柚の様子見てたらなんとなく理解出来た」



八木、というのは愛ちゃんの名字だ。



…力が抜けて、思わず地面にしゃがみ込んでしまった。



「本当に…あたしって、バカだよね」


「…」


「…ごめんね、日向」



日向は何でもお見通しなんだ。



日向に隠し事なんて出来ないんだ。



…わかってた、はずなのに。



「これ…」



しゃがんだまま、手を伸ばして日向に愛ちゃんの手紙を渡すと。



「…ん、郵便お疲れ」



そう微笑んでから、日向もあたしの隣にしゃがみこんできた。



…視線を、合わせるために。