今となれば…日向が発つことを、なんだかずっと前から知っていたような気さえするのだ。
「柚ちゃんは?」
「…え?」
「仕事の予定、どうなってんの?」
雄大先輩に聞かれて、あたしは微笑み返した。
「来週からアメリカのカリフォルニアに行ってきます」
「わ。さすが売れっ子翻訳家」
「か、からかわないでよ!」
茶化すように言う拓巳に慌てて言い返して、あたしはアイスコーヒーをすすった。
まだまだ頑張らなくちゃいけない。
それは自分自身が、よく分かってる。
「アメリカかぁ…」
「英語、使えたら便利だよなぁ」
そんな話をし出したのをよそに。
…あたしは窓から、青空を眺めていた。