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…ねぇ、日向。
元気ですか?覚えて…いますか?
あなたの見上げた先には青空があって
優しい風が吹き
願わくばその記憶の中に
あたしの存在があることを願います。
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「…それで」
「はい。…結局それが、最後だったんですよね」
あたしは受け取った原稿の角を綺麗に揃えながら、そう微笑を浮かべた。
「…つまらない話をしてしまいました。人気作家のナディア先生に…」
「いえ。興味深かったわ」
人気恋愛作家、ミス・ナディアの英語は癖がなく、日本人にも聞き取りやすい。
そして向こうにも、あまり違和感なくあたしの英語が通じているようで。
友好関係を築くのに、そう長い時間は掛からなかった。
「でも、ユズ」
「…はい?」
「どうして私に…その話を?」
首を少し傾げながらレモンティーに口付けると、ミス・ナディアはそう尋ねた。
同時に…あたしの視線は、その湯気を追って少し泳いだ。