日向はクールに流しながらそう微笑んで、片手であたしの手を取ったまま空いた方の手を振った。
「お、またな!」
「また部室に来て下さいね、日向先輩!」
いくつもの声に、日向は言葉の代わりに笑みを向けた。
…あたしと日向は肩を並べて、夕暮れの道を歩いた。
「なんかね…」
「…ん?」
「色々伝えたいことはあるんだけど…」
自分でも切なく、愛しいくらいに心は落ち着いていた。
――――分かっていたのかもしれない。
…ううん、きっと分かっていたんだ。
だって日向は…気まぐれな風だもんね。
風は行き先を告げないんだ。
「競走しよっか」
「は?」
「軽ーく、ゆっくり競走」
「昔は絶対にしてくれなかったくせに」