「…日向!」
「わ、急に走ってくんな。…びっくりした」
「お帰り」
あたしはそう笑い掛けて、ちょこんと隣に腰掛けた。
「…外に出て、何を考えてたの?」
「ん、ちょっとな」
日向はそう言ってから、あたしの膨らんだ鞄に触れた。
「…やたらパンパンだな」
「あ、参考書がね…」
あたしはそう答えながら鞄を開けて、いくつかの参考書を取り出した。
某大学外国語学部の赤本。
英文読解問題集。
ターゲット英単語、英熟語。
「頑張ってんだな」と感心したように、日向は一つ一つを手に取った。
「もちろん!絶対翻訳家になって、海外の小説を手掛けて行くんだもん!」
「…頑張れ。柚なら出来る」