拓巳は一瞬だけ日向のいた席に目を遣って。
…ゆっくりと、続けた。
「選択って多分、正しい正しくないよりも大事なもんがある。
…それを決める、勇気だ。
特にあいつの場合は…誰よりも勇気がいる選択だったんだよ」
――――…ねぇ。
…生きていくうちで、人は何度の選択を要されるだろう。
あなたは、どれ程の涙を流したのだろう。
…心が震えて、止まらなかった。
愛ちゃんが優しく、背中を撫でてくれた。
「…だからさ、俺は日向を本当に凄いと思う。
よく頑張ったな…って言ってやりたい。
…そう言ったら多分あいつ、また毒舌吐くだろうけどな」
拓巳は少し、苦笑してから。
…まっすぐと皆に向き合って、強い口調で言った。
「来週の大会を最後に、俺達陸上部三年は引退します」