「柚」
「…っ?」
「ごめんな」
病室に二人きりになると。
…日向はあたしの髪に手を伸ばして、静かに撫でた。
「もう一度走るって約束したのに…ごめん」
「…日向の出した答えに、間違いなんて何一つないよ」
無理せずに、微笑むことが出来た。
…日向の、どこか大人な瞳が
優しい瞳が、少し意外そうにあたしを見つめた。
「あれ。泣くと思った」
「な…泣かないよ!」
少しムキになったようにそう言い返すと、悪戯っぽく笑った。
「…あんまり泣いたら目が腫れるしな」
心がこんなにも穏やかなのは
きっと日向が…目の前にいて、その温もりを確かに感じるから。
「…なぁ」
「えっ?」