「…はい」
「全く足が動かなくなった人生を想像しろだなんて酷なことは言えない。
…だけどね、君の人生の可能性を削ってしまいたくはないんだ」
先生の言葉は切なく、深かった。
日向のことをどれ程思ってくれているのか…心に強く伝わる。
「…俺は、もう走りません」
日向の紡いだ言葉に、顔を上げると。
…日向は僅かに微笑んで、あたしを見た。
「ごめんな…柚」
「ひな…」
「…だけど、俺はもうグラウンドを走らない。
それが一番正しい道だと思うから」
日向が決めたことに…あたしは何も言えるはずもなかった。
…おばさんは涙ぐんで、日向の髪を撫でた。
「日向…」
「…ちょ、何すんだよ…」
少し身をよじってから。
…日向はおばさんに、タオルを差し出した。
「ん」